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Du er ikke alene 君は一人じゃない

デンマーク映画 (1978)

思春期の映画ファンにとって、「SF映画ファンにとってのスターウォーズ」とも言われるカルト映画。監督のラス・ニールスン(Lasse Nielsen)は、全寮制の学校で暮らす少年たちの映画を作りたいと思い立ち、結局出来上がったものは、デンマーク映画で初の二人の少年のラブ・ストーリーになった、と述べている。また、頭ではなく、心で映画を作ったとも。以上は、skykid.comが2009年10月に行ったインタビューのごく一部だ。一方、2018年3月14日に、「1970年代の映画俳優、性的虐待について語る」という記事の中で、ラス・ニールスンのこの映画の子役6人が、ホモセクシャル的な性的虐待を受けたと訴え、タイのパタヤに住んでいたラス・ニールスンは全面否定したと書かれている。ラス・ニールスンは、2016,2017,2018年と連続してショート・フィルムを発表しているので、パタヤで隠遁というのもおかしな話で、ひょっとしたらフェイク・ニュースかもしれない。あるいは、デンマーク映画で初の少年同士のラブ・ストリーを演じるにあたり、ボーとキムは嫌な思いをしたのかもしれない。なお、画像の抽出にあたっては、2014年にドイツで発売されたBLに基づいている。画像は古いDVDに比べて格段に改善されていて、この映画が製作後36年経っても好かれていることを示している〔BLでも、再生にVLC media playerを使えばプリント・スクリーンが可能〕

映画は、小規模な私立の全寮制中学校を舞台に、夏休みが間近に迫った時期の日々を坦々と追いつつ描写したもの。主人公は、校長の息子で、公立の小学校に通っている12歳のキムと、それより数歳年上で、寮で暮らしているボー。私立学校には、暴力的かつ校長の嫌がることしかしない劣等性や、変に理屈っぽい優等生、学校の女性職員の慰め物になっている可愛い生徒、どちらかというと模範生に近いがホモっ気のあるボーなど、様々な生徒がいる。キムは、自分が通っている小学校の同級生よりも、年上の生徒が多い父の学校の生徒たちと一緒にいる方が楽しいと思っている。そうした連中と付き合うことで、キムは、小学生らしい純真なあどけなさが残っている割に、小学生としてはあるまじき行為や発言を平気でするようになってしまった。その行為は次第にエスカレートしていき、一緒にピクニックに出かけ、泥酔状態で帰宅してこっぴどく叱られたりする。キムは部屋をこっそり抜け出しては、学校の仲間たちとますます親しくなり、ボーとは友達の一線を越えて、ホモ達になってしまう。その親密ぶりは、学期末の最後の行事で、父を含めた全教員、パーティに参加した生徒たちの両親に、8mm映像の形で知られることになる。

キムを演じるのは、ピーター・ビヤウ(Peter Bjerg)。資料によって生年が違う。ただ、skykid.comのインタビューでは、「我々は100人を越える少年についてスクリーンテストをしたが、ルックスが良くないか、演技がお粗末かで適任者がいなかった。撮影が始まる数週間前になり、脚本の共同執筆者で心理学者でもあるBent Petersenが、同僚の心理学者の12歳になる息子を推薦してくれた。その少年ピーターがスタジオに入って来た時、私は、彼こそ求める人だと確信した。ただ、あまりに髪が長くて、カットするまで顔を見ることができなかったがね」と述べている。ということは、12歳だったことになる。ピーターの映画出演はこの1作のみ。ボーを演じるのはアーナス・アーケンソー(Anders Agensø)。1962年生まれという情報があったが、もしこれが正しければ、ピーターより3つ年上になる。ボーの役は、すぐに決まったと書かれている。この映画には、もう1人、ラース役の少年が可愛いし、上手なのだが、どこを捜しても演技者の名前が分からない。生徒の集団の一員として配役名なしで羅列されるだけなので区別できないのだ。かなり活躍しているので、本来なら、キムとラースの2名表記にしたかっのたが、できなかった。


あらすじ

映画のオープニング・クレジットが終わると、1台の乗用車が停止し、4人の男女が降りる。1人の白髪の男性が、それを出迎える。ここは小規模な私立の全寮制学校〔Grundskole(K7-10)〕。迎えに出たのは校長、やってきた4人は視察に来た教育委員会のメンバー。最初に入って行ったのは、教師の談話室(1枚目の写真)。そこには、カールスン、モールスンの2人(男女)が談笑していた。視察団が来るまで2人はバカンスの話をしていたが、校長は、「教育論の話をされているだろうから」と言って、すぐに出て行く。トイレを視察に行くと、個室の壁によじ登っている生徒〔2つある個室の片方に紙がなく、もう1つの個室には誰かがワザと鍵をかけたため入れない〕と鉢合わせ。その生徒は、悪戯者扱いされる。廊下を歩いていると、L字型に曲がった廊下の反対側からスケボーに乗った生徒(12歳のラスケ)がやって来て ぶつかりそうになり、校長から、「こら! 禁止されとるの、知っとるだろ!」と叱られる。その次は、寮の二人部屋の1つに案内する。「ここが、男子諸君の寝室です。二人部屋で、とても快適な…」。そこまで言った時、壁に貼られた猥褻なポスターに気付いて絶句(2枚目の写真)。最後は、「小さいが、体操室です」と、5人の生徒が風船ボールで遊んでいる部屋に連れて行く。
  
  

夕食の時間。生徒全員が食堂に集まっている。校長は、立ち上がると、「静聴!」と大きな声で言う。「君たちに一つ、問題を提起しておきたい。今日、教育委員会から、お客さんがみえた。わが校を視察して、できれば 体育館を造る許可を与えるためだ。お客さんがみえて、学校の中を見ていただくのは、とても誇らしいことだ。私は、今日、それを楽しみにしていた。ある部屋に、入るまではだ。そこには、ばつの悪い 恥ずべきものがあった。壁一面に、べたべたと貼ってあったのだ。売春宿に相応しい ひどい状態で、わが校の世評を揺るがしかねない」。この話の間中、校長の一人息子で、夕食だけ食べに来ている12歳のキムは、自分に関係のない話なので、年上だけど仲のいいボーに笑顔を見せている(1枚目の写真)。校長の話を真剣に聞いていた真面目なボーも、キムの笑顔に気付き、思わずくすりと笑ってしまう(2枚目の写真)。それを聞いた校長は、振り向くと、「笑いごとじゃない、ボー!」と叱る(3枚目の写真)。そして、話をしめくくる。「卑猥な写真は、直ちに撤去すること。ユストシン先生も賛同されておられるが。今夜はテレビ禁止。すぐ、寝室に行きなさい。消灯は10時だ」。
  
  
  

北欧なので、まだ明るいし、何もすることがないので、一部の生徒は体操室で遊ぶ。体操用のマットで2人をくるみ、3人で簀(す)巻きにし(1枚目の写真)、くすぐる。一方、「卑猥な写真」が、直ちに撤去されていないオーレの部屋には、同室で年下のラースに加え、学校中で一番賢いアスク、それに、8mm撮影が趣味のレーセ、ボーの5人が集まっている。アスクは、「君ら、何てバカなんだ。この手のものは、頭をおかしくさせるだけじゃないか」と批判する。オーレは、「じゃあ、マリファナでも くれるんか?」と反駁。ラースは、レーセに「君の持ってるHな映画、観せてよ」と茶化す。オーレは、すぐに話にのり、「そうだ、ポルノの1本でも観せろや」と言う(2枚目の写真、右がオーレ、左がラース)。レーセ:「バカ言うな。もし、校長野郎が入ってきたら、どうなる? 卒倒するんじゃないか?」。オーレ:「あいつ、いったい何に 一番驚くかな? 俺なら、この『プレイボーイ』の写真の1枚を、奴の尻に貼ってやるぞ」。オーレの悪たれぶりがよく分かる。アスクは、「なあ、もっとちゃんとしろよ。僕らには、やるべきことがあるだろ」と、再度自制を促す。「女か?」。「森のピクニックだ。持ってく物が あるだろ? ワインとか。どうやって、手に入れる?」。ここで、初めてボーが口を出す。「キムなら、父さんから何本か手に入れられる」(3枚目の写真、右がレーセ)。オーレ:「奴も入れるのか?  これは幼稚園じゃないんだぞ!」。アスク:「キムは、いい子だ。父さんが校長だからって、彼の責任じゃない」。
  
  
  

一方のキム。その頃、自宅の冷蔵庫から紙パックを出し、オレンジジュースをコップに注ぐと、近くに置いてあった財布からお金を盗む(1枚目の写真、矢印はお札)。その時、母が、「キム、何してるの?」と呼ぶので、急いで居間に戻り、母の横に座る」。父:「キッチンの電気は消したか?」。「うん」。母は父に、「写真は、全部、ラースとオーレの部屋にあったの?」と尋ねる。「ああ、もちろん、あいつらの部屋だ。いつも、面倒ばかり起こしおって。オーレなら不思議はないな。あの親を見れば。母親は保護観察、父親はアル中だ」。それだけ言うと、今度はキムに、「お前は、ちゃんとした家庭に 感謝するんだな」と一言余分な発言(2枚目の写真)。キムは、「オーレは、いい人だよ」と庇う。母は、「いいこと、キム、あなたには、学校の生徒たちと、あまり付き合って欲しくないの。自分の学校の生徒たちと、もっと遊んだら?」と言う。「だって、クソ退屈なんだもん」。父は、直ちに、「キム、そんな汚い言葉を使うんじゃない!」と叱る。母も、「そうよ、下品な言葉よ、キム」と優しく叱る。
  
  

寮では、消灯の時間になる。アスクは、ベッドサイドのランプだけで本を読み続ける。同室のボーに、「さあ、これからが面白いぞ」と言い、声をあげて読み聞かせる(1枚目の写真)。「君、何歳なの?」。「13だよ」。「じゃあ、こんなことするのは違法ね。いいこと、君は何もしなかった、覚えておいて。約束よ」。「彼女はシャツを脱いだ… 彼女は、ショーツを脱ぐと、彼の前に裸で立った… 彼の腰が、燃えるように熱くなった…」。アスクは優等生とされている割には、ポルノ小説なんかを読んでいる。隣で寝ているボーは、聴いているのか、眠っているのか分からない(2枚目の写真)。一方、キムはベッドに横になると、パンツを脱ぎ捨て、うつ伏せになり、枕を両手で抱くと、体を揺すり始める。そして、うっとりとしたような笑顔を見せる(3枚目の写真)。
  
  
  

生徒全員に教師も加わり、歌っている。ピアノの上の壁にかかった肖像画は、デンマークの国民的詩人にしてフォルケホイスコーレ〔Folkehøjskole:デンマーク固有の全寮制の成人教育機関〕の創始者ニコライ・F・S・グルントヴィ〔Grundtvig〕。「彼の詩は、賛美歌となり、デンマーク国民に愛され、歌われた」とあるので、歌っているのはそれだろう。一部を訳すと、『♪あらゆる種類の神の鳥たちが、巣から安全に飛び立つ時、我ら、できる限り主を称えん』といった調子。オーレは、校長の隣にいながら肩肘をついて歌ってもいない(1枚目の写真)。校長は、肘を手で払いのける。次は、教師の授業。民主主義に関する内容だ。「最新の選挙で、最も多く得票した政党もしくは政党連合が、国民から権限を委託される」。そこまで話すと、黒板に「権限の委託」と書く。一方、ラースは、「彼女、おっぱいが素敵だ」と紙に書いて隣の生徒に渡す。「誰?」。アスクが手を上げる。「何だ、アスク?」。「国民の要望が法律に反映される保証はどこにあるのですか?」(2枚目の写真)。別の生徒が、隣の子に、「本物の先生みたいだな」と囁く。教師の返事は、「我々全員、デンマークの国民が、国会に誰を送るかについて、選挙で正しい選択をすること」。アスク:「選挙権のあるのは?」。「20歳以上の国民だ」〔現在は18歳〕。「20歳以下の僕たちは どうなるんですか? 国民じゃないんですか?」。ラースへの返事:「あの娘(こ)は、俺に惚れてるんだぞ」。教師:「若い人たちの大多数は、国政上、未成熟であり、ここにいる君たちも、その典型だ」(3枚目の写真)。アスクは、「若者や老人の意見を聴いてもらうことが重要なんです。じゃなければ、立ち上がらないと」と反論。ここでボーが、突然「グルントヴィ」と発言する。教師:「グルントヴィが、どうしたって?」。「彼、革命主義者でしょ」。「多分な。だが、彼は共産主義者ではなかった」〔この教師は共産党員〕。これが、この学校の真面目な部分の雰囲気。
  
  
  

授業が終わった後、ボーは店に買い物に行く。買ったものは、ポルノ雑誌とタバコ〔現在は18歳未満販売禁止だが、当時はよかったのだろうか?〕。そこに、年上の若者〔同じ学校の生徒ではない〕が入って来る。その男は、ボーが出て行こうとすると、店主が電話で応対している隙に、ボーを商品の棚に向かって突き飛ばす(2枚目の写真、矢印は男)。一方、キムは、地元の小学校に通っていて、同級生と一緒に歩いている。A:「ところで、あれって、ほんとにカッコ良かったね。モルフンが、オルスンから点を奪ったとこが」〔2人ともプロのサッカー選手〕。キム:「うん、ほんとすごい試合だった」。B:「週末は、ブリッタと旅行するの?」。キム:「まさか、そんな気分になれるかい。僕は、年上の子たちと、森へピクニックに行くんだ。すごいだろ!」(2枚目の写真)。そこに、自転車に乗ったボーが通りかかる。ボーはキムの前に停まると、「学校かい?」と訊く。「売春宿に、いたとでも?」〔昨夜の両親の話を聞いていて、覚えたのだろうか?〕。「乗ってくか?」。「ありがとう」。「ここに座って」(3枚目の写真)。2人の同級生は、年上の子に優しくしてもらっているキムを見て、羨ましそうだ。
  
  
  

2人だけになって森の中を走る時のキムの座り方は異常。2人乗りと言えば、後ろの座席なのにキムは、ボーの前に横座りしている。まるで、ラブラブのカップルのようだ(1枚目の写真)。ボーは、キムを秘密の場所に連れて行く。「秘密を守れるか?」。「もちろん」。「来いよ」。そこは、藁を積み重ねて作った一種のイグルーだった。「僕だって、時々プライバシーが欲しい時があるから、作ったんだ」と説明し、潜るように入る(2枚目の写真)。反対側には非常口があり、そこは湖畔になっている。「きれいなトコだろ?」。「うん、とてもきれいだね」(3枚目の写真)。
  
  
  

教員会議では、昨日の不始末につて校長が説明している。「ラースとオーレの部屋の写真は撤去された。だが、私は再度、協議事項としたい。というのも、昨年の轍を踏みたくないからだ。3人の生徒を、放校処分にせざるを得なかった。素行を正すことができなかった上に、彼らの頭は、女性のことで一杯だったから」。ここまで話すと、隣に座っていた女性〔校長の奥さん/教頭を兼務?〕から、「体育館の話」と指摘される。「そう、体育館だ。みんなも知ってると思うが、教育委員会の視察があった」(写真)「幸いに、今日、念願の体育館の許可が下りたことが分かった」。すると、若い教師が、「私は、体育館を建てるより、構内に女子寮を設ける方がいいと思います」と発言する〔体育館は、校長の独断で始めた話なのだろうか? 許可が下りてから、こんなことを言い出すのは、順序が逆だと思うが…〕。共産党員は、「スポーツは、少年たちの成長に有益だと思います」と校長の肩を持つ。校長:「私が、改めて指摘しておきたいのは、私立中学は共学にすると厄介事が増えるという点だ」。若い女性教員は、「私立学校を一つのカテゴリーに押し込めて考えない方が、いいのでは? 私は、共学でも上手くやってる学校を幾つか知っています」。校長は、瑣末意見は無視し、奥さんに、「次の協議事項は、何だね?」と訊く。「卒業パーティについてです」。「祝賀会の件だが、私には少し懸念材料がある。恒例の『十戒』の脚色が、上手くいくかどうか。ちゃんと、楽しめるものになるだろうか?」。若い教師:「心配無用です。きっと、楽しくて陽気なものになりますよ」〔卒業パーティは、映画のラスト・シーン〕
  

問題のシーンpart 1。真っ暗な中で、「こっちに、いらっしゃい、ラース」という声が聞こえる。「いやだよ。真っ暗なんだもん」。ラースが電気を点ける。「もし、誰かが降りてきたら?」。「誰も来ないわ。来て」。ラースは、女性の横にきて仰向けに寝る〔この女性は、賄い係?〕。女性は、ラースのシャツのボタンを外し始める(1枚目の写真)。そして、外しながらキスをする。「キスする時は、口を開けなきゃダメよ」。ラースは、口を大きく開ける。「そうじゃないの。こうよ」と言って、再びキス。シャツの隙間から手を入れて体を愛撫する。それが終わると、今度はラースの手を自分のセータの中に入れて胸を触らせる。怖くなったラースが、「ダメ! 誰かが来るよ」と体を起こすと、「誰も、ここまで降りて来ないわ。知ってるくせに」と言いながら、ラースを上半身を裸にする。「横になって」。そして、激しくキス(2枚目の写真)。手は、ラースのズボンに伸び、ボタンを外すとチャックを下げる(3枚目の写真)。これは、成人女性による12歳の少年の性的虐待以外の何物でもない。
  
  
  

ボーが、本を持って校長の自宅の部屋をノックする。校長は電話中。「何だね? 電話中なのが、分からんのか?」。「本を持って来ました」(1枚目の写真)。「そこに置きなさい」。そして、すぐに追い払うが、もし私用で頼んだのだったら、いくら校長といえども失礼な態度だ。ボーは、ピアノの音が聞こえる方に行ってみる。そこでは、キムがピアノの個人レッスンを受けていた。1曲終わった後、ボーが見ているのに気付いたキムは、満面の笑顔を見せる(2枚目の写真)。ボーは、声をかけるわけにはいかないので、手で、“藁で作った秘密の場所” の格好を示し、後で来るように合図する(3枚目の写真、矢印は藁の家の外郭形)。
  
  
  

2人は、秘密の場所でインディアンごっこ。といっても、走り回って遊ぶのではなく、ボーが「体にペイントしても、いい?」と訊く。「いいよ」。キムは、上半身 裸になる。ボーは、キムの体に指で絵を描いていく。キムは、「インディアンは、泉で、体にペイントして、戦いの踊りをやるんだ」と話す。「そんなこと、どこで知ったんだ?」(1枚目の写真)。「学校で、『長い槍』って本を読んだ」。「後ろ向けよ。背中にも描くから」。背中を向いたキムは、ボーに質問する。「パパが、『怪しい評判の母親たち』って話してたんだけど、何が言いたいんだろう?」。「『男と寝ることで稼いでる』 ってことさ」(2枚目の写真)〔映画の中では一度も出て来ないので、このシーンの趣旨が分からない〕。最後は、キジの羽をキムの頭に刺してインディアンらしくしたところで終わる。
  
  

問題のシーンpart 2。キムの両親が車ででかける。母は、車に乗る前に、「10時頃には、戻るって言っておいたわ」と話す。当然、キムはボーの部屋に行く。一緒にいると、同室のアスクがシャワーを終えて入って来る。それを見たボーが、「そうだ、今日は、シャワーの日だ」と言うので、シャワーが毎日ではないと分かる。ボーが、「シャワーを浴びてくる」と言って立つと、キムも「一緒に行くよ」と付いてくる。更衣室で、ボーは靴下を脱ぎながら、キムが服を脱ぐのをじっと見ている〔ボーは、明らかにゲイ〕。キムは、まだ子供なので、何の恥じらいもなく服を脱ぐ(1枚目の写真)。そして、一緒にシャワー室に行く。キムが、石鹸を体に塗りつけていると(2枚目の写真)、ボーが、「ちゃんと、そこ洗ってるか?」と訊く。「もちろん」。「包皮のことだぞ」。「洗わないといけないの?」。「そうだ。じゃないと、臭いだろ」。キムは背中に手が届かないので、「背中に、石鹸付けてよ」と頼む。ボーは、後ろを向いたキムの背中に石鹸をこすりつける。「学校じゃ、性教育あるのか?」。「何を、教わるもの?」。「子供を作らないようにする方法とか」。「知ってるよ」。「自慰についてもな」。「自慰って?」。「オナニーのことさ。いろんな方法が、あるんだぞ」。「他には、何を教わるの?」。「セックスが、素晴らしいってことさ」。そう言うとボーは正面からキムを抱く。すると、変な感覚に教われてハッとし(3枚目の写真)、体を離して「シャンプー、取ってくれよ」と頼む。後は、キムが、シャンプーで遊んで泡まみれになると、際どいシーンは終わる。映画が公開された1978年の段階で、子供同士のこうしたシーンはデンマーク映画でも初めてで、それがこの映画をカルト化した。
  
  
  

学校の生徒たちが、森に面した湖で遊んでいる。教師がついているので、授業の一環であろう。湖沿いの木に登り、そこからロープにぶら下がってジャンプする危険な行為も、お咎めなしだ(1枚目の写真、中央の木の根元で青い服を着ているのがボー、写真の右端に半分切れて写っているのが教師)。案の定、5人目に飛び込んだ生徒が、湖底の何かで左首を深く切り、血が止まらなくなる。1人が布切れを持って飛び込み、腕の最上部をきつく縛る(2枚目の写真、矢印は切った手首)。教師は、ボーに、「学校まで走って行って、助けを呼ぶんだ」と命じる。ボーは森の小道を全速で走り、医者を呼んでくる。
  
  

その日の夜。食事が終わった後も、食堂に残った生徒たちは、怖かった経験を話題にする。まず、トップは、さっき大ケガをした生徒で、「イェスパー、怖くなかったか?」と訊かれる。「ああ、少しはな」。「すごい血だったもんな。滝みたいに吹き出てた」。「ホント言って、これ、最悪の傷じゃないんだ。尻を撃たれたことがある。そっちの方がひどかった」。ラースも体験を語る。「一度、大きな斧で脚を叩いちゃった時なんて、靴に血が溢れるまで気付かなかった」と言って(2枚目の写真)、傷を見せる。ボーは楽しそうに、キムは恐ろしそうに話を聞いている(3枚目の写真)。キムの手がボーの腕に触っている。キムには何の意図もないが、ボーは、意識してしまい、手をどけるように頼む。怖い話の最後は、鉄板を運んでいるトラックのすぐ後ろを走っていたバイクの運転手の首が、動いた鉄板で切断されたという新聞の記事。
  
  
  

その夜、見回りの教師がアスクの部屋に行くと、彼は ベッドに横になり、本を開いたまま伏せて悲しそうにしている。「何を、読んでる?」。「ハンス・シェルフィグの『忘却の春』です」と言いながら、涙で鼻をすする。「落ち込んでるみたいだな。悲しいことでもあるのか?」。「両親のこと。時たまですが。ママとパパが恋しいんです。家に帰って一緒に話したり、やってることを眺めたりしてたいんです」(1枚目の写真)。「もうすぐ、夏休みじゃないか。夏休みは、ご両親と過ごすんだろ?」。一見平和裏な会話だが、教師が、「誰にでもあることだ」と慰めると、アスクは急に牙を剥く。「先生は、勤務時間が終われば家族と会いに帰宅できる。でも、僕たちは、ここに缶詰で、私生活なんてないんだ」と怒鳴るように言う。一方、ボーは、シャワーを終えて、隣のブースを見ると、ラースが年上の生徒とシャワーの下で抱き合っている。人の気配を感じたラースは、慌てて離れ、ボーを見る(2枚目の写真)。ボーは、見て見ぬふりをして、「君たちが、ここを出たら照明を切るぞ」と言うに留める。
  
  
  

翌日。カメラは歴史の授業を窓の外から写し、次いで、隣のディスカションを写す。そこには、ボーやラースがいる。女性の教師は、「コーヒーには、カフェインと呼ばれる物質が含まれていて、カフェインには興奮性があるの」と説明している。「例えば、もし、一度に百杯のコーヒーを飲んだら、多分、その人は死ぬでしょう」。ここで、ボーが手を上げる(1枚目の写真)。「コーヒーを飲み過ぎると 何だか変な気分になるのも、そのせいなんですか?」。「その通り、たくさんコーヒーを飲むと、そうなるの」。次に、教師はマリファナの話に移る。そして、「あなた達に、聴いて欲しいテープがあるの。私が、ラジオから録音したものよ。コペンハーゲンで録音された、14歳の少年へのインタビューなの。今日の討議に関連があるから、よく聴いてるのよ」と言い、テープを聞かせる。そこには、マリファナ中毒になった中学生の赤裸々な発言が録音されているが、一番不真面目そうに見えるのがラースだ(2枚目の写真)。
  
  

次の場面は、キムとその級友。2人は、アイスクリームを売っている店から出てきたところだ。A:「ピータースン〔教師〕の奴、僕に居残りさせたんだ。廊下にパンツが落ちてたって 僕が悪いんじゃないのに。すぐキレるんだ」。キム:「あいつの頭には、泥しか詰まってないのさ」。「それから、君が、『性教育の時間は?』〔ボーの影響〕って、質問したろ。あれは、いい線行ってたな」。「あいつ、たぶん、奥さんとセックスしたことも、オナニーしたこともないんだ」。「毛のあるナニって、見たことある?」。「うん、ボーのはおっきくて、毛がいっぱい生えてた。あれなら、絶対、セックスできると思うな」(写真)。「オナニーする時、ピュッと出せる?」。「もちろんさ」。とても小学生同士の会話とは思えない。
  

次のディスカションには、キムも加わっている。教師が、「まだ、『第二戒』で、何をやるか決まってないよな」と発言する(1枚目の写真)。これについては、補足しておこう。この学校ではもうすぐに迫った夏休み前の学期末行事として、『十戒』をやることにしている。ただ、『十戒』は古代のものなので、現実に即し、生徒たちにも親しみが持てるよう、『六戒』に減らし、中身も適宜改めた。正しい『十戒』は、1.わたしのほかに神があってはならない。2.あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない。3.主の日を心にとどめ、これを聖とせよ。4.あなたの父母を敬え。5.殺してはならない。6.姦淫してはならない。7.盗んではならない。8.隣人に関して偽証してはならない。9.隣人の妻を欲してはならない。10.隣人の財産を欲してはならない。だが、それを、1.殺してはならない(5と同じ)。2.自分を愛するように隣人を愛せ。3.正直であれ。4.自分の物でないものを持ってはならない(7.に近い)。5.虐めてはならない。6.父や母は息子に愛情を示せ。と変えた。だから、「『第二戒』で、何をやるか決まってない」とは、「自分を愛するように隣人を愛せ」を、どのように表現するか、という問いかけだ。「何か提案はないか?」。これに対し、レーセが、「僕、アイディアがあります」と発言する。「そのテーマで、映画を作ってもいいですか?」(2枚目の写真)〔レーゼが撮影した8mm映像が映画のフィナーレとなるので、これは実に重要な発言〕。教師は賛同する。「一つだけ、忘れないで欲しいことがある。映画の長さは10分を超えないこと」〔実際の映像は3分40秒〕。これが終わると、教師は、「では、みんな立ち上がって、鏡の前に立った気持で」と呼びかける。キムとボーは向かい合って立ち、お互いが鏡の中の自分のように、手を動かす(3枚目の写真)。ここでも、2人の仲の良さが伝わってくる。
  
  
  

キムが、珍しく、自分から父の部屋に入って行く。「パパ、話しておきたいことが あるんだけど」(1枚目の写真)。父は、「今は無理だ。後にしてくれないか?」と追い払う。そのくせ、入れ替わりに妻が入って来て、「ちょっと、いいかしら?」と訊くと、「もちろん、何だね?」と答える。息子に優しい父親とは、とても思えない。ただ、キムがやってきたのには切実な理由があった。妻は、「あなたにも、話を聴いてもらいたいの」と居間に呼ぶ。居間には、キムの同級生の母親がいた。妻:「さっきの話を、もう一度、主人に話してもらえません?」。母親は話し始める。「こうして出向いたのは、あなたにも お知らせしたかったからです。あなたの学校の生徒たちが、誰〔キムのこと〕にまとわりついているかを」。「話が、分かりませんな」。「私は、ちょうどお昼に 帰宅しました。そしたら、息子のトニーを見たんです。絨毯の真ん中で、異様な様子で横になり、顔を真っ赤にして絨毯に体を押しつけていました〔自慰行為〕。もちろん、私は、理由を正しました。息子は、振り向くと、にこっと笑って、「セックスは、素晴らしい」って言うんです(2枚目の写真)〔ボーがキムに教えた言葉〕。「私は、息子が、どこでそんな卑猥な言葉を覚えたか、考えました。息子は、キム君に、まとわりついています。そして、キム君は、学校の生徒たちに、まとわりついています。生徒さんたちは、全員が いい子と言う訳じゃないでしょ?」。妻は、「私には分からない。キムじゃないと、思いたいの」と擁護する。校長である父は、「確かめてみます。あなたの、おっしゃるようなことがあれば、断固とした処置をとります」と約束する。キムが、ドキドキしながら、窓辺に座っていると(3枚目の写真)、母とトニーの母親が話し合いながら出て行くのが見える。キムは父に呼ばれる。そこで何を言われたのかは分からない。ただ、話が済んだ後、キムが涙を拭き、音楽を最大音量で聴き始める姿だけが映る。ただ、次のシーンでは、森の中でキムがボーに抱かれて慰められている。だから、外出禁止になった訳ではなさそうだ。
  
  
  

問題のシーンpart 3。森へのピクニック。参加者は、ピクニックの話が出た日、オーレの部屋に集まっていた5人の生徒(アスク、オーレ、ボー、レース、ラース)、プラス、キム。それに3人の女性(うち1人は、ラースとキスしていた)。9人は、楽しそうに森への道を歩く(1枚目の写真、矢印はキム)。結構長いシーンで、バックグラウドに心弾む歌が流れる。「♪おいで、見つけ出して消えよう、森の中へ。森の奥の丸太に座り、空を見上げよう。歩き回り、腹ばいになり…自由になりたい。僕は、花が好き、女の子が好き、ワインが好き。花も、男の子も、女の子も、景色も美しい。服を緩めるから、手伝って欲しい…自由になりたい。悩みを、心から追い出して、自由にして欲しい。暮らしを、惨めにするものから、自由にして欲しい。僕を、抑えつけるものから、自由にして欲しい。そして、愛を求める。すべての人に愛を」。ピクニックの場所に着くと、持ってきたワインをグラスに注いで飲む。ラースは、先日オドオドと接していた女性と、ラブラブになっている(2枚目の写真)。この後、ラースの方からキスする。一方、ボーはキムのお腹に指で文字を書き、何と書いたか当てさせている。その間も、キムはワインをラッパ飲みし、ボーから制止されても やめない。キムが、文字書きをくすぐったがるので、ボーは、「何か面白いことをやってみるから、目を閉じて」と言い、目を閉じたキムにキスしたそうにするが、それは自制し、代わりにキムの胸に息を吹きかける。吹きかける位置はだんだんと下に降りていき、最後は、お臍に噛み付いてキムを驚かせる(3枚目の写真)。キムは起き上がろうとするが、酔っ払っていて立つこともできない。
  
  
  

夏休み直前と言えば、デンマークでは6月中旬。年間で最も日が長い時期なので、暗くなるのは夜の11時頃。だから、ほぼ真っ暗になってから学校の近くに戻って来た9人は、異常に帰りが遅かったことになる。キムは、ボーに支えられてやっと歩いている。オーレは、その姿を見て、「こいつの親父、頭にくるだろうな?」と言い、アスクに黙らされる。寮の入口に着くと、ボーの反対側からキムを倒れないように支えてきた女性が、「キム、この先は、自分でやるのよ。気付かれないように2階に行って、ベッドに入るの。いい?」と声をかける(1枚目の写真)。キムは頷くが、理解したようには思えない。その先10メートルほどボーが付き添って行き、後はキムに一人で行かせる。キムは、玄関まで辿り着き、ドアを開けて中に入ると、乱暴に閉める。そして、階段を数段上がった所で、力がなくなってそのまま下に落ちる。すごい音がしたので、父と母に見つかってしまう(2枚目の写真)。「一日中、どこにいた?」。「病気なの?」。キムは口を押さえると、すぐ横にあるトイレに飛び込んで、吐く。母は、「何か、悪い物でも食べたのかしら。お医者さんを呼ばないと!」と心配するが、父は、「医者だと? こいつは、酔っぱらったんだ!」と深刻に受け止める。一夜明け、キムがキッチンで牛乳をパックから直接飲んでいると、父はパックをもぎ取り、「ベッドに戻ってろ。気分が悪い奴は、ベッドで寝てるもんだ。後で、お前に話がある」と命令する。キムは部屋に戻ると、ベッドには横にならず、いつものように窓辺に座る(3枚目の写真)。
  
  
  

その日の昼間のシーンで、キムがいつも一緒だった、小学校の同級生が2人だけでアイスクリーム屋に入って行くので、その日、キムは謹慎も兼ねて病欠させられたのだろう。2人が店に入ると、入れ替わりにボーとラースが出て来る。その時、2人は、「やあ、ボー」と声をかける。ラースは、「満腹だね」とボーに言い、ボーは、「ああ、僕もだ」と返事して自転車に乗ろうとする。すると、ラースの自転車の後輪がパンクしている。仕方がないので、ボーも付き合い、一緒に自転車を押して歩く。2人が森の中の道を押していると、後ろからオートバイが接近してくる。前に、店でボーを虐めた男もいる。2人は急いで隠れようとする(1枚目の写真、矢印はオートバイの連中)。自転車を道路脇に投げ出し、そのまま森の中に逃げ込む。幸い、男たちは追って来なかった。ラース:「奴らは、まいたと思うよ」。ボー:「どこにも、姿はないな」。ラースは、いい機会なので、シャワーの時のことを弁解しておこうと思い立つ。「ボー、あのこと、バカだと思ったよね?」。「何が?」。「シャワー室でのこと」。「別に、何とも思わない」。「僕、ほんとに怖かった。先生が、入って来たのかと思ったんだ」(2枚目の写真)。「君が、男でも女でも、何とも思わない」。
  
  

その日の夜、談話室で、オーレやアスクたち4人でトランプをしていると、教師が、「校長先生の命令だ。すぐに寝室に行きなさい」と、やめさせようとする。オーレは、「くそくらえ。トランプの最中じゃないか」と反撥する。実に口が悪い。「校長先生は、森のパーティのことに触れていた。君たち何か知ってるか?」〔キムは、誰と一緒だったか告げ口しなかった〕。「ぜんぜん」。「ここだけの話だが、校長は激怒してるぞ。だから、静かに部屋に行って、文句を言わずに寝ることだな」。腹を立てたオーレは復讐をする。その結果、校長は夜、ベッドで本を読んでいると、ノックの音で呼び出される。やってきたのは、さっきの教師。「シャワー室に明かりが見えたので…」と、校長をシャワー室に連れて行く。「先生も、ご覧になるべきだと…」。ドアを開けると、壁全面がヌード写真で覆い尽されていた(1枚目の写真)。「生徒全員を、直ちに、体操室に集めるんだ」。「もう、11時半です。明日にされた方が…」。「今、すぐだ!」。生徒全員が、寝ていたそのままの格好で体操室に集合させられる。校長は、「残念なことに、また卑猥なものが発見された。今度はシャワー室だ。私は、前回、警告したはずだ。なのに、今回は目を背けたくなるほどエスカレートしている。やった者は、直ちに、自ら、名乗り出なさい」。誰も動かない。「そうか… ここで、一晩中でも待つからな。時間は たっぷりある」。この言葉で、オーレが前に進み出る(2枚目の写真)。翌朝開かれた緊急の会議。校長はオーレの放校を提案する。意見は真っ二つに分かれる。共産党員のユートスンは、「過度に寛大なのは良くない。他の生徒のことも考えねば」と放校に賛成。これに対し、体育館にも反対した若手のカールスンは、「バカげてます! 今どき、ヌード写真など みんな見慣れてる」と反論。意見がまとまらないので、校長は投票で決めることに(3枚目の写真)。結果は、1票差で放校。その一票を投じたのは、臨時雇いの教師だった。
  
  
  

校長は、生徒たちを集め、オーレの放校を説明する。「警告されていたにもかかわらず、警告は完全に無視された。だから、腐った人間は取り除かねばならん。君達も、彼の粗暴さは知っているだろう。現在の状況下で成し得る唯一の手段なのだ」。アスクが手を上げる。「先生、部屋を出ていただけませんか?」。「何だと?」。「先生のいない所で、オーレの放校について議論したいのです。僕は、ご説明に納得できませんし、他にも同じ意見の生徒がいます」。「気でも狂ったか。出て行けだと? 誰に話しているか分かってるのか? 私は校長だぞ。『出ていけ?』。私が決めたことだ」。「出て行かれないのですね?」。「もちろん。そんな必要が どこにある」。「じゃあ、僕が出て行きます。それに、同じ意見の仲間たちも」。こう言うと、アスクは席を立つ(2枚目の写真)。多くの生徒がそれに従う。
  
  

教室を出たアスクたちは、倉庫のような場所に集まっている。原因を作った破廉恥なオーレも、ふんぞり返って座っている。そこに、オーレの放校に反対していた女性教員が入って来る。オーレは、生意気に、「何しに、来たんです?」と訊く。「私は、こう言いに来たの。あなた達を支持してるし、手伝って欲しいことがあれば聴かせてちょうだいって」。オーレ:「それじゃあ、そのドアから、出て行ってくれます」。まともな生徒が、「黙れよ、オーレ」とたしなめる。そして、「他の生徒を、僕たちの側に付けてくれるとか」と提案する。ラースは、「校長を、撃つとか」と茶化し、ボーは、「ペンキを少し もらえませんか」と現実的(1枚目の写真)。教師は、「他の生徒を味方に付ける件は、あなた達が自分でやるのが一番よ。でも、ペンキのことなら何とかしてあげられるわ」と話す。聞いているラースは、このシーンが一番ハンサム(2枚目の写真)〔学校の生徒で声変わりしていないのはラースだけ〕。同じ場面にボーのクローズアップもある(3枚目の写真)。「この部屋に塗れば、素敵な談話室になるじゃない」。
  
  
  

次のシーンでは、ボーがキムの自転車のタイヤのパンク箇所を調べている。「お酒は、初めてだったのか?」(1枚目の写真)。「うん、だから、突然めまいがして… 最後に覚えてたのは、パパがカンカンになってたことかな」。「何も、覚えてないの?」。「君が、おへそに息を吹きかけたのは、覚えてるよ」。キムは話題を変える。「ある日、偶然ロビンと会ったら、僕のパパはバカだって言ってた。コペンハーゲンの共産党員を学校に入れるなんて」。そして、最後に、「僕も、戦ってもいいのかな?」と尋ねる(2枚目の写真)。その夜、校長は、自宅で妻と話している。妻:「誰が、電話したの?」。校長:「公立のピータースン〔以前、キムの同級生がけなしていた教師〕が、教育委員会に」。「何のつもりかしら?」。「うちの学校で起きてることが、知りたいそうだ」。「卒業間際にオーレを放校するのは、ほんとに正しいこと? お祝いの日なのに」。「もう、私の手には負えんな。次の教員会議で、再度 議題にしてみよう。もし、生徒が教師を尊敬しなくなったら大変なことになる。若い奴らは勝手気儘だから、一歩たりとも引かない覚悟だ。キムは?」。「寝室よ」。
  
  

しかし、その頃、キムは窓からロープを垂らして(1枚目の写真、矢印) 脱出を試みていた。歌が流れる。「♪やあ、ここに、子供が一人いる。さあ、勇気を出して、人生を より意味のあるものに変えよう」。キムはロープ〔一定間隔で結び目が作ってある〕を伝って(2枚目の写真) 地面に降り立つと、垂れているロープが人目につかないよう、釣り糸〔窓の桟とロープの先端を結ぶ〕を引っ張り、ロープを窓までたぐり上げると、釣り糸を壁の釘に巻きつける。これなら、登りたい時に、いつでもロープを下ろせる。向かった先は学校の集会所。そこでは、レーセが撮った8mm映画が上映されている。キムは、ボーと一緒に映画を観る(3枚目の写真)。映画の内容は、オーレの放校に対する抗議デモの様子。ボーが、共産党員の教師に、「なぜ、オーレは残れないんです?」とマイクを向け、「バカなことは、やめろ」と追い払おうとされる。「なぜ、僕たちは、学校の決定に参加できないんです?」。「学校には、学校のルールがある。それは、守られねばならん」。「なぜ、オーレの放校に賛成したんです?」。「道から、どくんだ。やめろ」。学校に残っている生徒の方が、もっと手厳しい。「君たちは、なぜ、授業をやめて 僕らに参加しないんだ? オーレは、君の友達じゃないのか?」。「友達じゃないな。奴が、ポルノで バカやらかしたからだろ」。ボーは授業中の校長にもインタビューを試みる。「我々の行動について、校長先生にインタビューしたいんです」。「何のために?」。「テレビ局に送るつもりなんです」。何を、たわ言を! 出てけ!」。こうした行動が、校長を弱気にしたのかも。
  
  
  

キムが、“ボーがパンクを直してくれた自転車” で森の道を走っていると、道端に5台のオートバイが乗り捨ててある(1枚目の写真)。キムは、何事だろうと森の中に入って行く。すると、ボーが大勢のワル〔ボーが、店で虐められた男の仲間〕に捕まっている〔残りの連中は、ボーの “藁で作った秘密の場所” を壊している〕。それを見たキムは、助けを呼びに行く。一方のボー、ナイフを喉に突きつけられ、「お前、喉を切られて逃げるニワトリ 見たことないか?」「ヒヨコは、狐に噛みつかれたみたいに、キーキー言うんだぞ」と脅される。「ここ〔喉〕を、ちょっと切ってみるか」。男には、言うだけで、切る勇気はない。そこで、「もっと楽しもう」と言うと、ボーのシャツをナイフで切り割き、上半身裸にする(2枚目の写真、矢印はナイフ)。その頃、学校の仲間たち〔25人くらい〕は、森の道を走ってボーの救援に向かう〔先頭を走るのはキム〕。オートバイの場所まで来ると、タイヤの空気キャップを外してから、森に入って行く。男は、ボーに「靴を、磨け」と、布で拭かせた後で、「舐めろ」と命じる。その頃、生徒たちは、手に手に木の棒を持ち、様子を窺っている。ボーが、無理矢理 靴を舐めさせられそうになった時、オーレが、「彼に触れた奴は、ブン殴ってやる」と叫んで姿を現わす。それに合わせて25人が一斉に森から出てくる。年は少し下かもしれないが、数の上では遥かに優っている。ボーを虐めていた連中は、怖くなって後退し、1人が湖に落ちる(3枚目の写真)。
  
  
  

キムは、無事に解放されたボーの肩に手を置く(1枚目の写真)。ボーを虐めていた男は、オーレが木に追い詰め、「俺の尻にキスしろ!」と命じる。「やらねぇぞ、このホモ野郎」。オーレは一発木の棒で殴り、「俺の尻に、キスしろと言ったんだ!」と怒鳴る。怖くなった男は、仕方なくキスする〔もちろん、ズボンの上から〕。その日の深夜、キムは再びロープを伝って脱出する。ここからが、問題のシーンpart 4。キムは、ボーの部屋に入って行くと、「ボー、もう眠ってる?」と小声で訊く。「しっ、静かに。アスクが眠ってる」。キムは、シャツとスボンを脱ぐと(2枚目の写真)、そのままボーのベッドに入る(3枚目の写真)。幸いパンツははいているが、キムにとって、ボーが優しいお兄さんから恋愛の対象となった瞬間。キムは意識していないかもしれないが、明らかなホムセクシャル行為だ。
  
  
  

生徒たちが、オーレも含めて教室で騒いで待っていると、そこにいつもの女性教師が嬉しそうに入ってくる。そして、「満場一致で、オーレの放校が取り消しになったわ」と告げる。生徒たちから歓声と拍手が起きる。そして、いよいよ学期末の父兄を交えたパーティの日。参加者が食事を楽しんでいると、企画担当のカールスンが立ち上がって、前方の舞台に行く。そこには赤いカーテンが引かれていて、1枚の紙が吊るされている。以前紹介した『六戒』だ。「みなさん、ちょっと、よろしいですか」(1枚目の写真)「生徒が企画した余興について、少し お話ししたいと思います。最初は、『十戒』を題材にするつもりでした。しかし、ご覧の通り、変更を加えました。時代と年頃を考え、6つに絞り込んだのです。生徒たちは、『六戒』を 自由に解釈しました」。話が終わると照明が消され、テープレコーダーのスイッチが入る。空襲警報のサイレンが響き、爆弾が投下される音がすると、舞台にアスクが現れる。「僕たちが平和に暮らせるように戦った 多くの若者を誇りに思います。敵に対して使われる兵器を 称えます。今、戦場にある兵士たちを、神の名において称えます。神が、我らとともに あらんことを。アーメン」。この言葉が終わると、兵士の姿をしたラースが登場し、背中を銃で撃たれ、口から血を流して死ぬパフォーマンス。倒れた場所がテーブルの1つだったので、乗っていた皿やグラスや花が散乱する。照明が点き、アスクとボーが普段着で掃除に回る。これが、「1.殺してはならない」の寸劇だ。すぐに、レーセが8mmの映写準備を始める(3枚目の写真)。校長は、カールスンを呼んで、「映画は、見たのかね?」と訊く。返事は、「いいえ。ドキドキしますね」。そして、再び消灯。
  
  
  

問題のシーンpart 5。まず、8mm映画の標題が示される。「Du skal elske din næste som du elsker dig selv(自分を愛するように隣人を愛せ)」。そして、歌が入る。もちろん、パーティ会場の人にとっては無声だ。「♪一度離れたら振り返るな。元の場所に逆戻りはできない。みんなの物笑いの種になって、不信感がつのるだけ」。ボーの嬉しそうな顔が映る(1枚目の写真)。「♪そして、よく分からないまま傷つくばかり」。キムが反対側から走ってきてボーに手を振る(2枚目の写真)。「♪よく分かっても、その代償は大きい」。2人は湖畔で向かい合う。互いに手を伸ばして、抱き合う。「♪真実に気づいたら、書き物にするといい。君には簡単にできる」。2人の抱擁は固い。「♪君は一人じゃない、一緒に誰かがいる」。抱き会う姿がクローズアップされていく(3枚目の写真)。ボーはキムのシャツを脱がせる。「♪君を非難する人々がいたら、鏡の前に立たせるがいい」。2人は再び抱き会う。「♪君の心に触れても、彼らには自由がない」。そして、自然とキスを始め、そのキスはどんどん激しくなる。「♪君は、彼らの境界をぐらつかせ、列車を停めた。でも、君は彼らの掟を超越できる。非難は罪悪感から来るのだから」。17秒続く長いキスが終わる。しかし、すぐに、反対側からキスをする。「♪彼らが掟と称するものは、彼らが決めたもの。今、君は疲れてるが…」。ここで、2度目のキスが終わり、2人は幸せそうに見つめ合う(4枚目の写真)。「♪…彼らの息子たちは、与えられた世界から抜け出そうとしている。君は一人じゃない、一緒に誰かがいる。そして、彼は、ずっと君を好いてくれる」。この最後のシーンは、確かに観ていて美しい。2人はホモセクシャクかもしれないが、映像はそれを超越している。このシーンについて、skykid.comのインタビューでは、「最初から、長いキスシーンを考えていたのですか?」という質問に対し、「違う。最初の撮影では、キムが父親から叱られて部屋から逃げ出し、ボーとキムは森の中の秘密の場所に行くという内容だった。これは、しかし、あまりに暗いラストだった。撮り直そうと思ったが、資金が底を突いていた。だから、新しいエンディングは、編集室の中で創り出したんだ」と述べている。
  
  
  
  

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